遺言書の検認とは

公正証書で作られていない遺言書は、家庭裁判所に持って行き「検認」というものを受けなければならないといいます。

家庭裁判所で行う「検認」とはいったいどのようなことをいうのでしょうか。

「検認」というのは、家庭裁判所の係官が立ち会って、ご遺族(相続人となるであろう人たち)とともに遺言書の中身をあらためることをいいます。

公の場でみんなで確認し合って、あとから偽造などができないようにするためです。

遺族同士とても仲が良く、遺言の偽造などするような人物が誰一人いないし、家庭裁判所に持って行って検認してもらうのもめんどうだから……

たとえそのような状況だったとしても、勝手に遺言書を開けてはいけません。

「検認」をしなくてはいけないのにしなかった場合、「5万円以下の過料」と決まっているので、簡単に考えてはいけないのです。

過料というのは、刑罰ではなく民事上や行政上の義務違反に対する制裁金のことです。

それに、のちのち遺族が受け取る遺産の名義変更を遺言通りにするときには、裁判所が発行する「検認ずみ証明書」をつけて申請しなくてはならないのです。

ですから、めんどうだからなどと「検認」を怠っていると、「検証ずみ証明書」がもらえず、この遺産分けの手続きができなくなってしまいます。

めんどうだとしても、「検認」を省略することはできないのです。

こうしためんどうを避けるためには、公正証書遺言を作りましょう。

公正証書遺言は、自筆証書遺言、秘密証書遺言とは違い、無効になりにくく、公正役場で作成し管理されるので偽造の心配もありません。

ですから、公正証書遺言はすぐに開封できて検認も必要なく、「検認ずみ証明書」も当然必要ないのです。

相続で分からないことがあったら、弁護士などの専門家に相談するのが一番です。

広島で相続に強い弁護士に無料相談

亡くなった人の銀行預金

家族が亡くなり、葬儀の段取りも決まり一段落といったところですが、いろいろ物入りになってきます。

当面の支払いに関しては、亡くなった人の預金口座にあるお金をあてよう、という人も多いことでしょう。

では、亡くなった人の銀行預金はどうすればおろすことができるのでしょうか。

銀行に口座名義人の死亡届けを出しにいっていなければ、口座は凍結されていないので、預金通帳と届け印があれば預金を引き出すことが可能です。

キャッシュカードでも暗証番号が分かれば引き出すことができます。

遺産分けが済んでおらず、自分のお金ではないので勝手に引き出すのは気が引ける、なんて思う人もいるかもしれません。

ですが、亡くなった人の銀行預金は、相続が生じた瞬間に、もう相続人の方々のものになっています。

現金は数字で割り算できますから、遺産分割の協議を終えていなくても、法定相続分の割合で自動的に分割され、それぞれの相続人がその割合分のお金を受け取っていることになるのです。

ただし、相続人の間で不明朗なことが起きないよう、引き下ろしの額や支出の明細などは、きちんとしておかなくてはいけません。

通帳やキャッシュカードなどで便宜的におろすのではなく、相続を理由として正式に銀行預金の払い戻しや名義替えを請求する場合には、多くの書類が必要になります。

銀行で「相続届」という用紙をもらい、預金の払い戻しか自分の口座への名義替えかのどちらかに丸をつけて出せば手続きができます。

亡くなった人の出生から死亡まで連続した戸籍(除籍)謄本、相続権の確認のために相続人全員の戸籍謄本、「相続届」に署名捺印するために全員の実印と印鑑証明書が必要となります。

葬祭の費用

「父に続いて母が亡くなり、葬儀の手配をしなくてはいけなくなりました。父の時には喪主は母で、費用も母がまかないましたが、今回は長男ということで私が喪主になりました。下の兄弟たちは長男である私が葬儀費用を出すのが当然だと思っています。長男だから喪主になるというのもどうかと思いますし、まして費用全額私の負担というのも納得いきません。」

このようなとき、いったいどうしたらいいのでしょうか。

そもそもだれが喪主(葬儀主催者)になるかは、法律では規定はありません。

誰が費用を出すかについてもです。

亡くなった方が指定していたり、それぞれの家や地方で習わしがあれば、それに従えばいいのですが、それもないとすると、兄弟で話し合って決めるしかありません。

まずは、お母さんが残した遺産を使って支払うことを考えましょう。

香典を葬祭費用の支払いに充てていいことはもちろんです。

葬儀代というのはかなりの費用になります。

しかも、香典には香典返しというものがあり、全額手元には残りません。

香典や亡くなった方の預金を使ってなるべく遺族の負担を少なくし、それでも金額が不足する場合には、不足分を兄弟が等分に出し合う、というのが、いまの民法「きょうだい=均等相続」のきまりからしても、納得のいく処理になるでしょう。

どのみち、近いうちに今回の相続について家族で遺産分割の協議を行わなくてはいけません。

このとき、一人で支払った葬儀費用などを、遺産分けの時には遺産を余分に受け取って埋め合わせできるように話し合いをします。

もし、話し合いが上手くいかないときには、家庭裁判所で調停もしくは裁判にかければ、解決することができるでしょう。

遺言書

家族が亡くなったあと、もしも「遺言書」が見つかったら、どうしたらいいのでしょうか。

「亡くなった父の遺品を整理していたら、「遺言書」と書かれた封筒が出てきました。
封がしてあるのですが、勝手に開けて中を見てもかまわないのでしょうか?」

封がしてあるうえに、封印(閉じ口のところに押印したり、「〆」「封」「緘」などの封字を書くこと)までしてある場合には、自分で開いてはいけません。

封印がなければ開いてもかまいませんが、いずれにしても、それが公正証書遺言ではない限り、家庭裁判所(亡くなった人の最後の住所地の)に持って行って「検認」を受けなければいけません。

ですから、封のしてある遺言書が見つかった場合は自分で開かず裁判所で開けてもらいましょう。

もし、封印がしてあるにもかかわらず、うっかり開けてしまったらどうなるのでしょう。

その場合、うっかりであっても、封印のある遺言書を「検認」の前に開封してしまうと〝5万円以下の過料〟をとられることになっています。

ですが、遺言が無効になることはありません。

遺言を書く場合は、遺言書を入れた封筒には封印をしないか、公正証書遺言にしておくことがオススメです。

公正証書遺言だと、遺族がすぐに開いて読んでいいことはもちろん、家庭裁判所での「検認」の手続きも必要ないのです。

遺言書が見つかった場合の対処法をまとまると、次のようになります。

①封印のある封書入りの遺言書の場合……家庭裁判所で開封してもらい、検認も必要となります。

②封印のない封書入りの遺言書の場合……すぐに開封してOKですが、検認が必要となります。

③公正証書の遺言書の場合……すぐに開封してOKで、検認も必要ありません。

家族が亡くなったら

大切な家族が亡くなってしまったら、悲しみのなか遺族には次々と処理しなくてはいけない手続きが生じます。

それは亡くなった人を葬るためのものであったり、亡くなった人のお金の関係(銀行預金や年金野生名保険等)を整理する手続きだったり、すでに生じている相続の問題を相続人たちがこれからきちんと処理するための事前準備の手続きだったりします。

どれもゆっくりとはできないものばかりで、遺族の方は悲しんでばかりいられないのが実情なのです。

早々にやらなくてはいけないのは、「葬儀場の決定」と「死亡届の役所(死亡地などの市区町村役場)への提出」になります。

死亡から7日以内が提出期限で、死亡届の提出と引き換えに火葬許可を出してもらうので、死亡届を出さないとご遺体を焼いてお骨にすることができないのです。

お墓に埋葬することもできません。

ちなみに、火葬許可証が火葬場で判をつかれると埋葬許可証になります。

ただ、じっさいには葬儀社に頼んで、そういった手順は一切代行してもらっているということが多くなっています。

役所に提出する死亡届とは、臨終後に医師がくれる「死亡診断書」のことです。

死亡診断書が死亡届で、死亡届書の右半分が、医師の書き込む死亡診断書(死体検案書)の欄になっているのです。

死亡診断書について気をつけなくてはいけないことがあります。

それは、役所に提出する前に「コピーを取る」ことです。

亡くなった人が生命保険やマンションなどの団体信用保険(ローン支払者が死亡すると保険金が出て返済が完了する)をかけていた場合には、その保険金の支払い請求に死亡診断書が必要になります。

コピーではダメな場合もあるので、保険会社に確認しましょう。